
日立、英国で進めていた原発事業を凍結 107
ストーリー by hylom
費用対効果が悪いならしょうがない 部門より
費用対効果が悪いならしょうがない 部門より
あるAnonymous Coward曰く、
日立製作所がイギリスで進めていたウィルファ原発の建設計画を凍結することを発表した(NHK)。
発表では、「資金調達モデルや原子力発電所の建設・運営に関する諸条件について合意に至るには、さらなる時間を要する」との判断で計画を凍結するとされている。費用が拡大する一方で英国政府からの支援拡大や他社からの資金協力が得られず事業性が確保できないということのようだ。英国側は協議を続ける方針とのこと。
この凍結により現在進行している日本の原発の輸出案件は0件となったが、世耕経済産業大臣は政府としては引き続き原発輸出の政策を進めていくと発言している(NHKの別記事)。
個人的には、見事な損切りをした日立に拍手を贈りたい。
必要な安全基準を満たすと原発はペイしない (スコア:1)
ってことなのでは。福島第一原発事故前の安全基準は実はけっこうザルだった、ということがわかったからそりゃコストは上昇しますわな。国内でも再稼働やめよう。
ペイはするけど他によりよい投資先がある (スコア:3, 参考になる)
って事かと。
安全基準は無関係とは言わないけど、純粋に金が集まらなかったと言う様だよ。
文字取り「支援拡大や他社からの資金協力が得られず」ってことで、要するに投資集めに失敗した。
日経の第一報によると [nikkei.com]
電気料金って典型的な装置産業 [wikipedia.org]で地域独占 [kotobank.jp]なので、価格が上がったら、その分だけ価格を上げることができる。突然不要になることも考えにくくて、投資としては比較的リスクが少なくて、そのかわりそれほど莫大に儲かるわけじゃ無い商売。
火力発電所は燃料費の高騰などのリスクがあるけども、原発だとそれも抑えられるという所で、安定した投資先だと目されてきた。
ところが、再生可能エネルギーがここのところ良くなってきていている。
日経の詳報、解説記事 [nikkei.com]にはこうある。英国には原発の電力を高く買う制度があるとした上で、
つまり、原子力に投資するよりも,再エネに投資した方が儲かるし安定しているので、そっちに資金が流れてしまったということらしい。
安全基準がどうのこうのというより、もう魅力的な投資先じゃ無くなってしまった。
こうなってしまうと政府がいくら保障をしても、いくら研究を強化して新技術を作っても「いや、それより再エネの方が儲かるし」って言われたら太刀打ちができない。
もし東日本大震災が無くても、数年程度猶予ができた程度で、同じ結果になっていたのではないか。あの時点で世界的に固定価格買取制度が仕込まれた上で、シェール革命で際限なく上がっていくはずの燃料価格に上限が設定された。優位性はどんどん落ちている。
安全性は大丈夫かと批判されていた頃の方がよっぽど対処はしやすかったと思う。もう後戻りはできない。
原発を引きつづき続けるなら、政府が保障と補助金を出すしか無いが、それができるのはロシアや中国など独裁に近い政治体制を敷いている所だけ。民主主義国家の日本やフランスではもう限界。
もう遅かったと批判するのは簡単だけど、サンクコストをきちんと見極めて撤退した日立は偉いと思う。後は、政府がきちんと現実を見て政策を転換すれば、インフラ輸出はもうちょっと行けると思うのだが。