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サイエンス

自然史博物館収蔵の鳥類・哺乳類標本、自然界の性比よりもオスが多いとの調査結果

タレコミ by headless
headless 曰く、

英国・ロンドン自然史博物館の研究チームが英国および米国、フランスの自然史博物館に収蔵されている鳥類と哺乳類の標本を調査したところ、自然界における性比よりも大きな偏りがみられたとして収蔵品選定時に留意するよう呼び掛けている(論文Daily Mail Onlineの記事Manchester Evening Newsの記事The Guardianの記事)。

調査には地球規模生物多様性情報機構(GBIF)の記録を用い、ロンドン自然史博物館のほか、米国のアメリカ自然史博物館、フィールド自然史博物館、国立自然史博物館(スミソニアン)および、フランス国立博物館が1751年から2018年に入手した標本のデータを目別・種別に集計した。集計からは若い個体の標本や亜種名などを除き、標本が100点以上ある種(歴史的変動の調査では50点以上)のみを対象にしている。また、性別未判定の標本については分析の対象にしていない。

結果としては、鳥類標本1,395,748点のうちメスが20%、オス31%、性別未判定49%となり、哺乳類標本では1,100,580点のうちメス41%、オス44%で性別未判定は15%と鳥類よりも大幅に少なかったという。これは哺乳類の性別が鳥類よりも判別しやすいためとみられる。性別未判定の標本を除外すると鳥類標本の40%、哺乳類標本の48%がメスとなる。鳥類の場合は自然界でもオスがメスよりもやや多い(187種の中央値でメスが44.8%)ものの、標本の方が偏りが大きい。一方、哺乳類の多くは自然界での性比も1:1程度と考えられるため、標本のメス48%は大きな差ではないとみている。ただし、偏りは基準標本で特に大きく、メスは鳥類の27%、哺乳類の39%に過ぎないとのこと。

偏りが発生した原因の一つとして、古くは採集者が体の大きなオスの個体や美しい飾り羽を持つオスの鳥、大きな角や牙、たてがみを持つネコ目やウシ目のオスを選択していたことが挙げられる。ただし、過去130年間で性比に大きな変化はないものの、飾り羽や角などによる選択は減少傾向がみられるそうだ。また、ネズミ目でもオスの標本がメスの標本よりも多いなど、外見的な価値だけで偏りが発生したとは考えられない。

このほかの原因としては、採集方法による意図しない偏りが発生した可能性もある。たとえば小型の哺乳類の場合、広い範囲を縄張りにするオスの方が採取者に出会う機会や罠にかかる機会が多くなる。音で鳥を呼び寄せてカスミ網で採取する方法ではオスが多くなる一方、巣で採取することの多いシギダチョウ目の標本はメスが50.4%を占める。また、メスはオスよりも性別の確定が難しいため、性別未判定の標本はメスが多くを占める可能性も否定できないとのこと。

自然史博物館の収蔵品は生物多様性の研究で重要な役割を担うため、博物館ではこのような偏りを修正する方向で収蔵品を選定する必要があると研究者は述べている。採取者も偏りを減らすべく努力することが求められる。さらに、種の変異を広い範囲で調べる研究者は、偏りの存在を認識したうえでデータ収集方法を決める必要があるとのこと。今回の研究成果は、基準標本を決める際により慎重に性を考慮するよう分類学者にプレッシャーを与えるものであり、特に鳥類では別の性の準基準標本の選択が望ましいと提案するものでもあるとのことだ。

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