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TarZの日記: 「首都高全体の振動から、東京23区内の家庭向け電力の4割を発電できる」 6

日記 by TarZ

振動を電力に,道路や服でも発電 (要ログイン)

「首都高速道路全体の振動で東京23区内の家庭に供給する電力の4割に相当する4GW以上を発電できる」(音力発電)

# 念押し。単位は4GWhではなくて、4GWなんですよね。

 これはびっくりの数字です。本当にそんなに発電できるのでしょうか。

 もうちょい見慣れた単位にすると、4GWは400万kW。だいぶ大きめの原子力発電所並みです。でも首都高はずいぶん大きいから、トータルするとそれくらいの電力は絞りだせるのかも。
 ということでざっくり計算してみる。

 1台のクルマが首都高に与える振動(無駄に捨てられているもの、と音力発電は主張)で発電できる電力を、ここでは1kWとしますか。ちょっと甘すぎる気もするけど、とりあえずこの値を採用するとして、400万kW/1kWなので、首都高には「同時に」400万台のクルマが走っている計算になります。

 むう。そんなにクルマって走っているもの…じゃないですよね。ということでこれも調べてみる。
 首都高の資料(pdf)によると、首都高の舗装総面積は約490万m2。ということは、1m2ちょっとに1台のクルマがひしめき合っていないと計算あいませんね。さすが万年渋滞で名高い首都高! んなわきゃーない。
 そもそも、同じ資料によると通行台数は約115万台/日とあります。これは1日の累計であって、同時ではないでしょう。

 となると、私が1台あたりの発電量を小さく見積もりすぎているのでしょうか。それとも、首都高にはクルマ由来以外の振動もあって(そりゃあるでしょうね)、その考慮を抜かしてしまったということでしょうか。
 音力発電のいう"4GW"って、どんな計算なんでしょう?

 ちなみに、記事には例の発電床についても記載されています。

慶応義塾大学発のベンチャーである音力発電は,2007年になって寸法が約30cm×60cmの板の上を体重60kgの人が歩くだけで平均約0.3Wを発電する「発電床」を開発した
...
音力発電は今後も発電床の改良を進め,「発電効率を圧電素子自体で10倍,振動板などの改良で10倍の計100倍にするのが目標」(同社 代表取締役の速水浩平氏)という。

 目標は30Wですか。1秒に2歩歩くとして、1歩あたりの発電量は…(アレ???)
 まあどのような条件でかは判りませんが、スゴイデスネ。

… … … …

 なお、この記事では、音力発電以外の企業の研究成果も書かれている。そちらは、(実現性はともかくとして)目指している用途はまとも。

この議論は賞味期限が切れたので、アーカイブ化されています。 新たにコメントを付けることはできません。
  • 資源エネルギー庁によれば、2005年の日本の運輸部門のエネルギー消費量は3.79*10の18乗Jとのこと。
    (これは乗用車を含む自動車や船やら鉄道やら日本のすべての乗り物が消費したエネルギー)
    これはならすと120GWになります。

    4GWってことは、首都高の振動エネルギーだけから、日本中の乗り物が消費するエネルギーの
    3%強が回収できるってこと?
    ありえないですよね。
    私の中では音力発電は詐欺会社認定。
    • by TarZ (28055) on 2009年04月23日 16時45分 (#1554103) 日記

       好意的に解釈すると「単位を間違えているのかな」というところです。しかし、この件以外でもあそこは色々と「実績」があるので、そろそろ「水発電」の領域に近づきつつあるかなぁと疑っています。

       すぐに突っ込める「水発電」の件と異なり、圧電素子自体はトンデモでもなんでもないので、かなり巧妙な事例だというのが私の見解です。
       発電の詳細なメカニズムまで突っ込んで見て、どこから供給されるエネルギーでどれだけ発電されるのか、定量的に考えてみないとおかしい点を指摘できません。ところが、そのあたりの詳細(使われる圧電モジュールの仕組みや発電量の試算条件など)はあまり明かされないので、ツッコミが非常に難しい。今回の「首都高で4GW発電可能」のように、はっきりした(そして、明らかにおかしい)数字が出てくることは稀なケースです。

       ベンチャーだから、資金を集めるために色々しなくちゃいけない、という事情は理解します。が、あり得ない見込みをブチ上げるのはよろしくないと思うわけでして。
       まじめに再生可能エネルギーを研究している他のところにとっても迷惑な話でしょう。

      親コメント
  • by Anonymous Coward on 2009年04月27日 15時42分 (#1555886)

    そのままずばりのタイトル記事が
    http://www.blwisdom.com/AdvancedPeople/02/ [blwisdom.com]
    あります。
    慶応大学の名称を利用して、各マスコミにプレスリリースを流し、
    説明会で金を集めるのが目的の会社なんですかね。

    •  どうもありがとうございます。その記事は知りませんでした。

      http://www.blwisdom.com/AdvancedPeople/02/ [blwisdom.com]

      一番やりたいことは、ユビキタスデバイス用のエコ発電。携帯電話や情報端末などを使ったユビキタスサービスが増えると、

      『音力発電でも動く』製品が尊重されるようになるといい

       記事中、このあたりは間違っていないんですけどねえ。ただ、「首都高で原発並みを目指す」というところはさすがに計算がおかしい。

       また、最近まで見落としていたのですが、4/1にこんな記事もありました。

      東洋経済 音力発電って何だ!? エアバスも大注目の日本発グリーンベンチャー(1) [toyokeizai.net]

      「今から50年後、CO2が発生する発電はできなくなる。そうなったときには世界の発電の20%を音力・振動力発電が担うようになる」

       その音や振動は誰が(またはナニが)出すのでしょう。人間の歩行の振動で総発電量の20%を発電? あるいはクルマ(これは、残りの80%のエネルギーで動いている)由来の振動?
       ぱっと考えただけで、「あれ?」と思うような数字です。

      .

      説明会で金を集めるのが目的の会社なんですかね。

       これがよく判らないんです。

       もちろん、開発に必要な資金集めはしてはいるようですが、少なくともジェネパックスのように大々的に投資家から資金を募っているような話は聞きません。また、音力発電のサイトを見ると有料の説明会を開催しているようですが、こんなのでは大した儲けになるとも思えません。

       この会社がなにを目指しているのか、私としても理解しきれていないところがありまして。

       最初の記事にあるように、「ユビキタスデバイス向けがやりたい」のであれば、方向性としては間違っていないでしょう。これは、もともと圧電素子向きとされていた応用です。
       しかし一方で、「首都高発電」のように、明らかに方向性がおかしくてエコでない(おそらくクルマのガソリン消費が振動発電分以上に悪化する)ものもあります。同じ圧電素子の応用とはいえ、規模からなにからまるで違うし、見積もりされた発電量も信じがたいものです。
       この2つを並べて「夢」として語ってしまうあたり、どうも、社長本人は素で勘違いしている可能性がありそうな気がします…。

       背後に悪意があるなら攻撃できるのですが、純粋に善意でやられているとどうしたものか。

      親コメント
      • by Anonymous Coward
        NECとの共同研究で行ってた電池のいらないリモコンみたいな小電力向けが本来の圧電素子の使い方だろうというのが普通の技術者の考えです。
        しかし音力発電の社長の考えは音による発電が目指すところです。入り口からしておかしい気がしてきました。音の発生するものから発電を目指すんで首都高とかにどうしても目が向くんでしょう。

        それから、「純粋に善意でやられている」としても結果として環境負荷がかかって利便性もないのなら批判していくべきだと思います。川の浄化するのにEM菌をまくとかも善意でやられてますけど、余計環境を破壊する可能性が高いので批判されてますよね。
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身近な人の偉大さは半減する -- あるアレゲ人

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