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この手の話は定期的に出てくるのですが, なかなか実現しませんよね. まあ, 石油メジャーの陰謀だとかゴルゴの仕業って妄想するのも楽しいのですが, ちょっとばかり現実的にどんな問題が出てくるのか考えてみるのもいいものです.
まず最初に太陽熱発電の短所を挙げると, 基本的に昼間しか発電できないってのがあります. 水が沢山あれば揚水発電所という手もあるのですが, 太陽熱発電が有効な場所というと水に不自由しているところが殆どなので, その代わりに圧縮空気貯蔵プラント(CAES) [nagasaki-u.ac.jp]なんて方法を使います. とはいえ, これも気密性の高い岩盤の存在が前提なので, 設置場所にはかなりの制約がつくものと思われます.
第2に発電をしたとして, それをどうやって消費地に運ぶかってことです. 太陽熱発電が有効なのは基本的に人も獣もかよわぬ死の土地です. そこで発電したエネルギをどうやって大量消費地まで運ぶかってのは大きな問題です. 電気のままなら高圧直流, 場合によっては超伝導送電線を引く必要が出てきます. 他の形態, 例えば水を電気分解して水素にするなら, 水をどこからか調達しなければなりません. 多分海水でもなんとかなるでしょうけど, 大陸の内地まで運ぶパイプラインが必要になることでしょう.
最後に, 太陽光を使った発電施設だと受光装置の汚れを定期的に清掃しつづけないといけないってことです. それも灼熱の炎天下, あるいは逆に身も凍る夜間での作業になります. それを遥か地平線を超えて92マイルも続くプラントでやらなきゃいけないんですから, 人手に頼るというのは最初から却下でしょう. 最近の光触媒を使った自己清掃機能も, 基本的に一定量の降雨や散水を前提とした超親水性によるものだから, こういった乾燥地帯での用途には期待薄です. それでも清掃程度で済めばいいぐらいで, 砂砂漠(岩石砂漠というのもあるので)などでは砂丘の移動を止めないと発電施設が埋没するなんて事態にもなりえます.
こういった個々の, しかし確実に遭遇するであろう困難をどう解決するかが見ものだと思います.
蓄熱して日没後も発電を続けることができます。
そのための例として圧縮空気プラントも出したのですがね. それに, 溶融塩を使った蓄熱発電では残念ながらまだ24時間発電までは到っていません. 現在最新のスペインPS10プラント [euro-energy.net]では曇あるいは冬には5~6時間, 典型的な夏場の晴れた日には10~12時間以上の発電が可能ですが, 24時間運転を実現するためにはおおよそ15~16時間の発電が必要で, これについては現在計画中のプラントで実現される予定です. また, 溶融塩蓄熱発電は溶融塩の腐食性や400℃という高温がプラントの配管にどの程度の損耗をあたえ, メンテナンスコストがどの程度になるのかという所が不安定要因になります.
今更送電線の追加が問題になったりはしないでしょう。
アメリカの送電網ってのは, ここ数年頻発している大規模停電事故で何度も指摘されている [nifty.com]ように, 危機的な状態にあります. しかも, 電力ってのは基本的にある程度の範囲(アメリカなら西海岸とか東海岸とかぐらいの単位)で地産/地消されて, 大陸を半分以上移動するような長距離送電ってのはそれで収まらない部分を融通する程度のものです. そうでなければ送電ロスが大きいですから. それに対し, 太陽熱発電で大部分の電力をまかなおうとするならば, そういったリザーブ的な電力ではなくメインルート級の経路を確保しなければなりません. アメリカのサンベルトは主に大陸南西部に集中していますので, 大消費地のうちカリフォルニアやテキサスぐらいなら, どうにかなるかもしれません. しかし, 東海岸や五大湖周辺, 南部にまで持ってこようとするなら, 新しい高圧直流送電網が必要なのは確かです.
これらの太陽光・太陽熱発電についての最新動向と技術・経済的課題については, つい最近のScientific Americanで記事 [sciam.com]になっていますし, 日本語訳されたものも先月号(2008年4月号)で読むことができます. 筆者は太陽電池関連の会社や研究所の所長で, 慎重ではあるものの推進の立場で記事は書かれています.
その記事の中でも何回も指摘されていますが, 太陽電池・太陽熱発電所が技術的に可能であることは確かですが, 問題は他の発電方式に対してコスト的な優位性を持つことができるかということです. すなわち課題が解決できることは重要なのですが, それに加えて重要なのは課題がどの程度のコストで解決できるかなのです. その点, 昨今の原油価格の高騰は追い風になるとはいえ, まだまだ安心はできないでしょう.
これが他のサンベルト地帯だと, サハラ諸国なんかは政情不安で石油でさえ満足に掘れない状態. インドは電力網自体が未整備でピンポイントの太陽光発電の方が役に立ちそうな状態. 中国は名物の砂嵐で農地さえも守れない. 何とかなりそうなのは, スペイン, メキシコ, オーストラリアぐらいかな. それにしても送電網の整備に巨額投資が必要ってのは同じですが.
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ソースを見ろ -- ある4桁UID
うまい話にゃ裏がある (スコア:2, 興味深い)
この手の話は定期的に出てくるのですが, なかなか実現しませんよね. まあ, 石油メジャーの陰謀だとかゴルゴの仕業って妄想するのも楽しいのですが, ちょっとばかり現実的にどんな問題が出てくるのか考えてみるのもいいものです.
まず最初に太陽熱発電の短所を挙げると, 基本的に昼間しか発電できないってのがあります. 水が沢山あれば揚水発電所という手もあるのですが, 太陽熱発電が有効な場所というと水に不自由しているところが殆どなので, その代わりに圧縮空気貯蔵プラント(CAES) [nagasaki-u.ac.jp]なんて方法を使います. とはいえ, これも気密性の高い岩盤の存在が前提なので, 設置場所にはかなりの制約がつくものと思われます.
第2に発電をしたとして, それをどうやって消費地に運ぶかってことです. 太陽熱発電が有効なのは基本的に人も獣もかよわぬ死の土地です. そこで発電したエネルギをどうやって大量消費地まで運ぶかってのは大きな問題です. 電気のままなら高圧直流, 場合によっては超伝導送電線を引く必要が出てきます. 他の形態, 例えば水を電気分解して水素にするなら, 水をどこからか調達しなければなりません. 多分海水でもなんとかなるでしょうけど, 大陸の内地まで運ぶパイプラインが必要になることでしょう.
最後に, 太陽光を使った発電施設だと受光装置の汚れを定期的に清掃しつづけないといけないってことです. それも灼熱の炎天下, あるいは逆に身も凍る夜間での作業になります. それを遥か地平線を超えて92マイルも続くプラントでやらなきゃいけないんですから, 人手に頼るというのは最初から却下でしょう. 最近の光触媒を使った自己清掃機能も, 基本的に一定量の降雨や散水を前提とした超親水性によるものだから, こういった乾燥地帯での用途には期待薄です. それでも清掃程度で済めばいいぐらいで, 砂砂漠(岩石砂漠というのもあるので)などでは砂丘の移動を止めないと発電施設が埋没するなんて事態にもなりえます.
こういった個々の, しかし確実に遭遇するであろう困難をどう解決するかが見ものだと思います.
しかしデマを流す人も居る。 (スコア:3, 興味深い)
「基本的に」とは書いておられますけど、蓄熱して日没後も発電を続けることができます。
規模やデザインにもよりますが。
>電気のままなら高圧直流, 場合によっては超伝導送電線を引く必要が
ダウト。
これだけあちこちに送電網を張り巡らしておいて [msn.com]、今更送電線の追加が問題になったりはしないでしょう。
>遥か地平線を超えて92マイルも続くプラント
何も一直線に並べる訳では無いでしょう。
----------
それ以前に、集光式太陽熱発電所は80年代から商用稼働してます。solel社 [solel.com]などが代表的。
実際は問題にならないこと(しかも一部は勝手な想像)を列挙して、さも問題があるような書き方をする意図をお伺いしたいですね。
Re:しかしデマを流す人も居る。 (スコア:1)
そのための例として圧縮空気プラントも出したのですがね. それに, 溶融塩を使った蓄熱発電では残念ながらまだ24時間発電までは到っていません. 現在最新のスペインPS10プラント [euro-energy.net]では曇あるいは冬には5~6時間, 典型的な夏場の晴れた日には10~12時間以上の発電が可能ですが, 24時間運転を実現するためにはおおよそ15~16時間の発電が必要で, これについては現在計画中のプラントで実現される予定です. また, 溶融塩蓄熱発電は溶融塩の腐食性や400℃という高温がプラントの配管にどの程度の損耗をあたえ, メンテナンスコストがどの程度になるのかという所が不安定要因になります.
アメリカの送電網ってのは, ここ数年頻発している大規模停電事故で何度も指摘されている [nifty.com]ように, 危機的な状態にあります. しかも, 電力ってのは基本的にある程度の範囲(アメリカなら西海岸とか東海岸とかぐらいの単位)で地産/地消されて, 大陸を半分以上移動するような長距離送電ってのはそれで収まらない部分を融通する程度のものです. そうでなければ送電ロスが大きいですから. それに対し, 太陽熱発電で大部分の電力をまかなおうとするならば, そういったリザーブ的な電力ではなくメインルート級の経路を確保しなければなりません. アメリカのサンベルトは主に大陸南西部に集中していますので, 大消費地のうちカリフォルニアやテキサスぐらいなら, どうにかなるかもしれません. しかし, 東海岸や五大湖周辺, 南部にまで持ってこようとするなら, 新しい高圧直流送電網が必要なのは確かです.
これらの太陽光・太陽熱発電についての最新動向と技術・経済的課題については, つい最近のScientific Americanで記事 [sciam.com]になっていますし, 日本語訳されたものも先月号(2008年4月号)で読むことができます. 筆者は太陽電池関連の会社や研究所の所長で, 慎重ではあるものの推進の立場で記事は書かれています.
その記事の中でも何回も指摘されていますが, 太陽電池・太陽熱発電所が技術的に可能であることは確かですが, 問題は他の発電方式に対してコスト的な優位性を持つことができるかということです. すなわち課題が解決できることは重要なのですが, それに加えて重要なのは課題がどの程度のコストで解決できるかなのです. その点, 昨今の原油価格の高騰は追い風になるとはいえ, まだまだ安心はできないでしょう.
これが他のサンベルト地帯だと, サハラ諸国なんかは政情不安で石油でさえ満足に掘れない状態. インドは電力網自体が未整備でピンポイントの太陽光発電の方が役に立ちそうな状態. 中国は名物の砂嵐で農地さえも守れない. 何とかなりそうなのは, スペイン, メキシコ, オーストラリアぐらいかな. それにしても送電網の整備に巨額投資が必要ってのは同じですが.
Re:しかしデマを流す人も居る。 (スコア:1)
しかし、送電距離が比較的短いところ(西海岸など)の需要を賄う分には問題にならないはずです。
最近も、500~900MWの太陽熱発電を導入する契約 [earth2tech.com]が結ばれています(ちなみに原発1基が1000MW前後)。最初のご投稿では、こういう「地産地消」の場合でも問題があるように読めます。
あと、砂砂漠は最初から候補から外されます。確実に遭遇「しない」ような場所にしか建設されません。
Re: (スコア:0)
solel社の例は5基で16.5万kwなんで小さい小さい。
>何も一直線に並べる訳では無いでしょう。
スケールダウンして仮に10マイル四方だとしても結局とんでもない手間だと思います。
solel社のはどれくらいの面積があってどうやってるか知りたいところですが。
Re: (スコア:0)
原子力発電推進のニュースなら最近よく聞きますが、太陽熱発電の話は聞いた覚えがありません。ここ日本でも、大間原発着工間近だとか、トータルコストで太陽熱(太陽光だったかも)発電よりも原発のほうが良いだとかのニュースがあったように記憶します---放射能の取り扱いというデメリットをおいても原発のほうが有利というのがにわかに信じがたいところではありますが。
素人考えですが、太陽熱発電で今の原発を置き換えてしまえば、ウラン資源輸入もしなくていいし放射性廃棄物処理も要らないし、良いこと尽くめじゃないんでしょうか。
Re:うまい話にゃ裏がある (スコア:1)
電力が消費されるのは主に昼間なので、これはむしろ長所では?
原子力等は昼夜の出力調整できず、現状で夜間は電力があまってしょうがないので、捨てるよりましとたたき売り [tepco.co.jp]。