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B-CAS問題に関連して「電磁的記録不正作出」という用語が出てきてからしばしば話題に上がってはいることなのですが、B-CASの改造や、それの使用が電磁的記録不正作出にあたるのかどうかがいまだにどうも個人的にはしっくりこないというか、「そういう解釈は可能なの?」という感じがする。
私が気になっているのは、「電磁的記録不正作出及び供用」について「人の事務処理を誤らせる目的で」と規定されている部分でして。(→http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/joho_tsusin/security/basic/legal/02.html [soumu.go.jp] の最初の方にある「電磁的記録不正作出及び供用」を参照)元々この法律は、偽造キャッシュカードとか、偽造テレフォンカードとか、「他者(の機械)に対して使う」ようなものを想定して作られて法律だったから、そういう状況なら「人の事務処理を誤らせる目的」にあたる。というのは分かりやすい。ただ、B-CAS改造・使用の場合、それを自分(の持っている機械、テレビとか)に対して使うことになるわけで、はたしてそれは「人の事務処理を誤らせる目的」にあたると言えるのか言えないのか・・・。
私の知る限りでは、B-CASの改造・使用は以下のような状態になると思うのだけど:・自分の持っているB-CASカードを、自分の持っているパソコンで、自分の持っているカードリーダーを使って、自分で改造したものを、自分の持っている機器(テレビとか)に対して、自分で使う。・・・なんか上記のように書いてしまうと「人の事務処理を誤らせる目的」にあたるというのは難しいのではなかろうかという気がする。
個人的には、以下のように解釈すれば「人の事務処理を誤らせる目的」にあたるといえるかもしれないと思うのだが。・B-CASカードは、名目上は「利用者にレンタルしているだけ」であるので、所有者はB-CAS社である。B-CAS社の所有している機械(カード)を改造するので「人の事務処理を誤らせる目的」ことになる。 → ただこの解釈だと、他者の所有する機械(カード)に改造ツールを使って不正なデータを送り、機械(カード)に記録された内容を改ざんするわけだから、「電磁的記録不正作出及び供用」ではなく、他者の機械を不正に使ったということでむしろ「不正アクセス禁止法違反」辺りになるのではないかと思う。・「人の事務処理を誤らせる目的」というのは、非常に広い意味で解釈される。「人の事務処理を誤らせる目的」という規定は、実際にはほぼ無視して良い。 → なんかすごく適当で「なんでもありかよ」と思われてしまうような解釈だけど、私の調べた限りではこの解釈をするしかないんじゃないかと感じた。「なにか電磁的記録を作って(使って)、それで誰かが困ったら、適用可能(その辺りの境界線は裁判で決まる)」という感じ。
(これ以外にも、私が思いつかないだけで他の解釈もあると思うし、あくまで個人的な意見ですので、他の方の意見は "人の事務処理を誤らせる目的 b-cas 解釈" などで検索すると良いです。)
本当は何度も裁判が行われて、判例が積み重なってくれるのが一番良いんだけどなぁ・・・。でも、判例が無く「違法という解釈もありうるし、合法という解釈もありうる」という状況で裁判をやって、万が一「合法」という判決が出てしまうというのは警察やB-CAS社にとっては最悪だろうし、他の著作権問題のように、ひとりひとりの罪はさほど重くはないけど、多くの人がそれをやってしまうのが困る。という状況では、基本的には特定の個人をどうのこうのするより「逮捕」とか「法的措置」などによる見せしめ効果の方が有効だろうし、そうすると下手に裁判にするよりも、白黒つけずに(裁判はやらずに)、不起訴にするとか、和解するとかにしておくというのが一番安全なのかもしれない。
個人的には司法がどう判断するのか興味があるので、できれば裁判をやってほしいという気もするのだけれど・・・。なんかいつも尻切れトンボで、なんというか、残念というか、つまらないというか・・・。
# ところで全然関係ない話だけど、「名目上はレンタルだから、不正に使ったら違法」という理論は、他の問題にも応用できるのではないかと思う。# 例えばプリンターの互換インク問題とかで、販売したプリンターを名目上は「消費者にレンタルしてるだけ」ということにしておいて、そこに非正規インクを使ったら違法。みたいな感じ。# プリンター製造業者としては、高価な純正インクの代わりに互換インクを買われるのはたぶん好ましく思ってないだろうから、互換インク製造業者や販売業者と戦う代わりに、「互換インクの使用は違法ですよ。使ったら逮捕されますよ」みたいなのを消費者に対して言って回ったら、結構それをみんな信じて互換インクを買わなくなったりして、意外と効果があるんじゃないだろうか。# なんとなくだけど、「合法だ」という主張をそのまま信じちゃう人は少ないけど、「違法だ」という主張はそのまま信じちゃう人が多いような気がする。特に、「使った側が(消費者側が)逮捕される」と言えばかなり大きなインパクトがありそう。
同じく納得しがたい感覚を持っていますが、その理由を自分で考えてみるに、相手の関与がないからなのかな、と。
電磁的記録不正作出及び供用罪は、(公・私)文書偽造の電子データ版という位置付けですよね。(公・私)文書偽造罪においては、使われた紙の所有者、作られた場所、使われた場所、というものは関係なく、自分の紙を使い、自宅で偽造し、これを自宅で行使しても、文書偽造罪になるわけです。同じことが電子的に行われたとするなら、同じく罪に問われても問題は感じない。
ところが、B-CASの場合は、「行使」の場面で相手がいない。紙なら、見せる相手がいるはずです。電子データでも、サーバーに送信するなら、相手がいます。しかし、B-CASは、放送で送られたデータを、受信者側で処理するだけで、正当な処理も、不正な処理も、この過程や結果を相手には提示しない。
これを、「B-CASカードは貸与だから」で済ますのは、納得できないのです。例えば、会社でPC等を借りて仕事(事務処理)をしたというとき、この仕事をしたのは誰かといえば、貸した側ではなく、借りた側なわけです。この仕事が何か(本罪や業務妨害罪等)の犯罪被害にあったとしたら、被害者に位置付けられるのは、貸した側ではなく、借りた側なわけです。
そうすると、放送で受信したデータは、受信者が処理しているだけなわけで、「B-CAS社の事務処理」を見出せない。
また、仮に、構成要件上では誰にも見せずとも「人の事務処理を誤らせる」が成立するのだとしても、本罪を含む文書偽造の罪全般(刑法第17章)の保護法益が「文書に対する公共的信用」だとされるところ、誰にも見せないものに「公共的信用」の侵害があるのか、という疑問もあります。
不正アクセス禁止法の場合は、4点気になります。
(1)法の対象となるアクセスは、電気通信回線を通じたアクセスに限定されていますが、LANですらない、カードリーダーでの読み書きで生じる電気信号を「電気通信回線」と言えるのかどうか。例えばキーボードと本体も電気信号の送受信で制御されていますが、これは電気通信回線ではないとされています。
キーボード(コンソール)を直接操作して無断で使用する行為は、「電気通信回線を通じて」行われているわけではないため、不正アクセス行為には該当しないこととなります。警察庁「不正アクセス行為の禁止等に関する法律の解説 [npa.go.jp]」警察庁 サイバー犯罪対策:法令等 [npa.go.jp]
(2)法の対象となる機器には、複数の使用者を識別する機能(アクセス制御機能)が必要になりますが、B-CASカード自体にそういう機能があるのでしょうか。
(3)法の対象となる機器には、一定の独立性が必要とされていますが、B-CASカードをそうだと言えるのかどうか。
本法においては、一定の独立性を有するものに限られ、各種機器に内蔵されているマイクロ・コンピュータは含まれない。警察庁「不正アクセス行為の禁止等に関する法律等の概要及び運用上の留意事項について [npa.go.jp]」警察庁の施策を示す通達(生活安全局)|警察庁 [npa.go.jp]、平成12年1月21日、pp.1-2
(4)先のコメントと共通しますが、B-CASカードの処理を管理しているの(アクセス管理者)は誰なのか。
B-CASカードは単純なメモリカードのような記録媒体じゃなく、内蔵CPUがあって暗号をデコードする動作をしてる。ちっさいとはいえ計算機。なので「人の」 ->「B-CAS株式会社の」「事務処理」 -> 「(各家庭に貸与したカード内で)暗号をデコードする処理」ということらしい。はなはだ納得しがたいが。
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192.168.0.1は、私が使っている IPアドレスですので勝手に使わないでください --- ある通りすがり
電磁的記録不正作出にあたるのかどうかがわからん (スコア:3, 興味深い)
B-CAS問題に関連して「電磁的記録不正作出」という用語が出てきてからしばしば話題に上がってはいることなのですが、
B-CASの改造や、それの使用が電磁的記録不正作出にあたるのかどうかがいまだにどうも個人的にはしっくりこないというか、「そういう解釈は可能なの?」という感じがする。
私が気になっているのは、「電磁的記録不正作出及び供用」について「人の事務処理を誤らせる目的で」と規定されている部分でして。(→http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/joho_tsusin/security/basic/legal/02.html [soumu.go.jp] の最初の方にある「電磁的記録不正作出及び供用」を参照)
元々この法律は、偽造キャッシュカードとか、偽造テレフォンカードとか、「他者(の機械)に対して使う」ようなものを想定して作られて法律だったから、そういう状況なら「人の事務処理を誤らせる目的」にあたる。というのは分かりやすい。
ただ、B-CAS改造・使用の場合、それを自分(の持っている機械、テレビとか)に対して使うことになるわけで、はたしてそれは「人の事務処理を誤らせる目的」にあたると言えるのか言えないのか・・・。
私の知る限りでは、B-CASの改造・使用は以下のような状態になると思うのだけど:
・自分の持っているB-CASカードを、自分の持っているパソコンで、自分の持っているカードリーダーを使って、自分で改造したものを、自分の持っている機器(テレビとか)に対して、自分で使う。
・・・なんか上記のように書いてしまうと「人の事務処理を誤らせる目的」にあたるというのは難しいのではなかろうかという気がする。
個人的には、以下のように解釈すれば「人の事務処理を誤らせる目的」にあたるといえるかもしれないと思うのだが。
・B-CASカードは、名目上は「利用者にレンタルしているだけ」であるので、所有者はB-CAS社である。B-CAS社の所有している機械(カード)を改造するので「人の事務処理を誤らせる目的」ことになる。
→ ただこの解釈だと、他者の所有する機械(カード)に改造ツールを使って不正なデータを送り、機械(カード)に記録された内容を改ざんするわけだから、「電磁的記録不正作出及び供用」ではなく、他者の機械を不正に使ったということでむしろ「不正アクセス禁止法違反」辺りになるのではないかと思う。
・「人の事務処理を誤らせる目的」というのは、非常に広い意味で解釈される。「人の事務処理を誤らせる目的」という規定は、実際にはほぼ無視して良い。
→ なんかすごく適当で「なんでもありかよ」と思われてしまうような解釈だけど、私の調べた限りではこの解釈をするしかないんじゃないかと感じた。「なにか電磁的記録を作って(使って)、それで誰かが困ったら、適用可能(その辺りの境界線は裁判で決まる)」という感じ。
(これ以外にも、私が思いつかないだけで他の解釈もあると思うし、あくまで個人的な意見ですので、他の方の意見は "人の事務処理を誤らせる目的 b-cas 解釈" などで検索すると良いです。)
本当は何度も裁判が行われて、判例が積み重なってくれるのが一番良いんだけどなぁ・・・。
でも、判例が無く「違法という解釈もありうるし、合法という解釈もありうる」という状況で裁判をやって、万が一「合法」という判決が出てしまうというのは警察やB-CAS社にとっては最悪だろうし、
他の著作権問題のように、ひとりひとりの罪はさほど重くはないけど、多くの人がそれをやってしまうのが困る。という状況では、基本的には特定の個人をどうのこうのするより「逮捕」とか「法的措置」などによる見せしめ効果の方が有効だろうし、
そうすると下手に裁判にするよりも、白黒つけずに(裁判はやらずに)、不起訴にするとか、和解するとかにしておくというのが一番安全なのかもしれない。
個人的には司法がどう判断するのか興味があるので、できれば裁判をやってほしいという気もするのだけれど・・・。
なんかいつも尻切れトンボで、なんというか、残念というか、つまらないというか・・・。
# ところで全然関係ない話だけど、「名目上はレンタルだから、不正に使ったら違法」という理論は、他の問題にも応用できるのではないかと思う。
# 例えばプリンターの互換インク問題とかで、販売したプリンターを名目上は「消費者にレンタルしてるだけ」ということにしておいて、そこに非正規インクを使ったら違法。みたいな感じ。
# プリンター製造業者としては、高価な純正インクの代わりに互換インクを買われるのはたぶん好ましく思ってないだろうから、互換インク製造業者や販売業者と戦う代わりに、「互換インクの使用は違法ですよ。使ったら逮捕されますよ」みたいなのを消費者に対して言って回ったら、結構それをみんな信じて互換インクを買わなくなったりして、意外と効果があるんじゃないだろうか。
# なんとなくだけど、「合法だ」という主張をそのまま信じちゃう人は少ないけど、「違法だ」という主張はそのまま信じちゃう人が多いような気がする。特に、「使った側が(消費者側が)逮捕される」と言えばかなり大きなインパクトがありそう。
Re:電磁的記録不正作出にあたるのかどうかがわからん (スコア:2)
同じく納得しがたい感覚を持っていますが、その理由を自分で考えてみるに、相手の関与がないからなのかな、と。
電磁的記録不正作出及び供用罪は、(公・私)文書偽造の電子データ版という位置付けですよね。
(公・私)文書偽造罪においては、使われた紙の所有者、作られた場所、使われた場所、というものは関係なく、自分の紙を使い、自宅で偽造し、これを自宅で行使しても、文書偽造罪になるわけです。
同じことが電子的に行われたとするなら、同じく罪に問われても問題は感じない。
ところが、B-CASの場合は、「行使」の場面で相手がいない。
紙なら、見せる相手がいるはずです。
電子データでも、サーバーに送信するなら、相手がいます。
しかし、B-CASは、放送で送られたデータを、受信者側で処理するだけで、正当な処理も、不正な処理も、この過程や結果を相手には提示しない。
これを、「B-CASカードは貸与だから」で済ますのは、納得できないのです。
例えば、会社でPC等を借りて仕事(事務処理)をしたというとき、この仕事をしたのは誰かといえば、貸した側ではなく、借りた側なわけです。
この仕事が何か(本罪や業務妨害罪等)の犯罪被害にあったとしたら、被害者に位置付けられるのは、貸した側ではなく、借りた側なわけです。
そうすると、放送で受信したデータは、受信者が処理しているだけなわけで、「B-CAS社の事務処理」を見出せない。
また、仮に、構成要件上では誰にも見せずとも「人の事務処理を誤らせる」が成立するのだとしても、本罪を含む文書偽造の罪全般(刑法第17章)の保護法益が「文書に対する公共的信用」だとされるところ、誰にも見せないものに「公共的信用」の侵害があるのか、という疑問もあります。
Re:電磁的記録不正作出にあたるのかどうかがわからん (スコア:2)
不正アクセス禁止法の場合は、4点気になります。
(1)
法の対象となるアクセスは、電気通信回線を通じたアクセスに限定されていますが、LANですらない、カードリーダーでの読み書きで生じる電気信号を「電気通信回線」と言えるのかどうか。
例えばキーボードと本体も電気信号の送受信で制御されていますが、これは電気通信回線ではないとされています。
(2)
法の対象となる機器には、複数の使用者を識別する機能(アクセス制御機能)が必要になりますが、B-CASカード自体にそういう機能があるのでしょうか。
(3)
法の対象となる機器には、一定の独立性が必要とされていますが、B-CASカードをそうだと言えるのかどうか。
(4)
先のコメントと共通しますが、B-CASカードの処理を管理しているの(アクセス管理者)は誰なのか。
Re: (スコア:0)
B-CASカードは単純なメモリカードのような記録媒体じゃなく、
内蔵CPUがあって暗号をデコードする動作をしてる。ちっさいとはいえ計算機。
なので
「人の」 ->「B-CAS株式会社の」
「事務処理」 -> 「(各家庭に貸与したカード内で)暗号をデコードする処理」
ということらしい。はなはだ納得しがたいが。